長年連れ添った夫が亡くなった。相続人は妻と子どもとします。
ごく一般の家庭であれば、相続する遺産は自宅と少しの預貯金というケースがほとんどです。
そうした場合、妻と子どもは2分の1ずつの相続となるので、妻が自宅を相続するとその他の財産はすべて子どもが相続することになります。そうすると妻は、住む家はあっても生活費がなくなり、経済的に困窮することになります。自宅以外にめぼしい財産がない場合は、自宅を相続する代償としてさらに相応の代償金を求められ、自宅を売却せざる得ない場合もあります。
親と子の仲がいい場合はいろいろな解決策が考えられますが、親子の折り合いが悪い場合は妻が長年住み慣れた自宅から退去しなければならない可能性が出てくるわけです。
今年(平成30年)4月に民法の相続分野が大改正され、その目玉の一つとして「配偶者居住権」というものが創設されました。
これは相続開始前から被相続人の自宅に住んでいた配偶者がそのまま住み続けることができるようにする制度です。
「配偶者居住権」とは、配偶者が死ぬまで、または一定期間自宅建物に住み続ける権利であり、自宅建物の所有権とは別に設けられます。したがって、遺産分割で自宅建物の所有権を子どもに相続させることにして、被相続人(夫)の妻が居住権だけを取得して、長年夫と一緒に住んだ思い出のある家に死ぬまで住み続けることができるようになるわけです。
相続する自宅建物の価値は、配偶者居住権の価値と所有権の価値に分かれ、配偶者居住権の評価額は所有権の評価額よりは大きく下がります。そのため、原則どおり妻と子どもが2分の1ずつ相続した場合でも、妻は自宅に住むことができる上に残りの相続財産である預貯金についても応分の額が相続できるようになります。
この制度は2020年の7月12日までに施行される予定です。
制度について関心のある方、より詳しくお知りになりたい方は、シニアライフ法務事務所までご相談ください。
行政書士シニアライフ法務事務所 木﨑 義純
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